研究系及び研究施設の現状 211
田 中 彰 治(助手)
A -1)専門領域:構造有機化学、分子スケールエレクトロニクス
A -2)研究課題:
a) ナノ電子工学との融合を目指した大型分子機能システムの開発
A -3)研究活動の概略と主な成果
a) 近年,単電子トンネル現象を機能源とする単電子素子回路の開発研究が半導体工学分野において進展している。し かし,単電子移動過程は,バルク半導体よりもパイ共役分子にとって自然なプロセスであると考えられ,よって「パ イ共役分子ベースの単電子素子回路の全合成」を研究ターゲットとして設定した。単電子制御系創出の当面の課題 として,「単一大型分子内の定位置における電荷キャリアの準安定保持」と,「高効率・高信頼性の分子−分子間,また 分子−電極間接合の構築」の実現を目標に検討を進めた。具体的アプローチとして,「キャリアー保持機能を有する 構造部位」としてパイ共役中心を嵩高い置換基により速度論的に安定化した被覆型分子鎖(分子エナメル線),また
「電荷キャリアーの入/出力に適した構造部位」として非被覆型パイ共役鎖を用い,その各々を単一分子鎖内の定位 置に作りこんだオリゴチオフェン系多機能化分子電線の設計・開発を行なった。
B -1) 学術論文
M. C. R. DELGADO, V. HERNANDEZ, J. T. L NAVARRETE, S. TANAKA and Y. YAMASHITA, “Combined
Spectroscopic and Theoretical Study of Narrow Band Gap Heterocyclic Co-Oligomers Containing Alternating Aromatic Donor and o-Quinoid Acceptor Units,” J. Phys. Chem. B 108, 2516–2526 (2004).
B -7) 学会および社会的活動 学会の組織委員
分子研分子物質開発研究センター・特別シンポジウム「分子スケールエレクトロニクスにおける新規分子物質開発」主催 者 (1998).
応用物理学会・日本化学会合同シンポジウム「21世紀の分子エレクトロニクス研究の展望と課題―分子設計・合成・デ バイスからコンピュータへ―」日本化学会側準備・運営担当 (2000).
第12回日本MRS学術シンポジウム:セッション H「単一電子デバイス・マテリアルの開発最前線∼分子系・ナノ固体系の 単一電子デバイス∼」共同チェア (2000).
F irst International C onference on Molecular E lectronics and B ioelectronics 組織委員 (2001).
B -10)外部獲得資金
一般研究(C ), 「多段階酸化還元系を含む真性伝導π共役ポリマーの創出」, 田中彰治 (1994年 -1995年).
基盤研究(C)(2), 「定序配列・低エネルギーギャップ型高次ヘテロ環π 共役オリゴマーの構築」, 田中彰治 (1996年 -1997年). 基盤研究(C )(2), 「高度の電子輸送能を有するナノスケール単一分子電線の創出」, 田中彰治 (1998年 -1999年).
212 研究系及び研究施設の現状
基盤研究(C )(2), 「シリコンナノテクノロジーとの融合を目指した機能集積型巨大パイ共役分子の開発」, 田中彰治 (2000年- 2001年).
C ) 研究活動の課題と展望
本邦は非ベンゼン系有機化学の始原の地であり,特異な電子的特性を有する各種のパイ共役系分子群について「徹底的 な実験による試練に耐えた設計・合成体系」が確立している。本研究PJは,この知的資産(継承者が少ない)をナノ科学・技 術の新規開拓に活用する先鞭をつけようとするものであり,あまりに広義化してしまった「分子エレクトロニクス」のなかでも, 最も高度で規格外の分子の抜本的開発が要求される領域の進展に寄与しようとするものである(ついでに,継承者が増え てくれると少し嬉しい)。